今や宇宙に行くことは珍しい時代ではなくなりました。
太陽系ですら惑星はほぼ全て探査されています。
最近は冥王星にも探査機が到達し、この惑星はつまらないのっぺりしたものではなく、多様であり、更に興味を湧き立てるものである事実を明らかにしました。

太陽系の最大のエネルギー源は何でしょうか?中心に位置する太陽は太陽系の質量の98%を占め、その巨大な重力で核融合反応を起こしてエネルギーを生み出しています。その恩恵は地球にも降り注いていますね。
万が一太陽が無くなったらどうやって生きていけばいいでしょう?私が生きている間はなさそうですが。隣に移り住むのも手かもしれません。
太陽の隣にあるのはアルファ・ケンタウリ星と言います。距離にして4.3光年。現在の探査機の速さでは何万年も掛かってしまいます。
もしそこに行くことが出来れば今までに無い大きな知見を得る事ができるでしょう。何せ私たちは太陽しか知りません。望遠鏡でうんと拡大しても小さな点にしか見えない遠い恒星を眺めても、推測しかできません。

やっぱり直接行って観測してみたい。
そこで探査機を送り込みたい。
今の探査機は一つの機械を作り、それに多くの観測装置を積んで目的となる惑星へ精度よく送り出しています。
これは故障してしまった場合に修理が不可能であるため、そのための準備、検査を大掛かりにしなければならなくなります。これは予算の増加にも寄与します。

では、沢山の小型探査機を送り込めばもしかしたらアルファ・ケンタウリまで行けるのではないか?
最初に考えたのは野田篤司さんです。
数100-10000個の超小型探査機を光速の30%まで加速して送り出し、写真一枚を撮って地球に送る。
太陽以外の恒星を初めて目の前で観測できるなんてワクワクしませんか?

超小型群探査機の実現性は最近高まってきました。数uWでもきちんと動作するコンピュータ、高効率な太陽電池、群の動作理解、太陽帆船の登場、干渉レーダーの進歩など。

そこで、この探査機の要件を挙げて、検証してみたいと思います。

・超小型であること
・自前で電力を得られること
・姿勢をある程度変えられること
・近くに仲間がいることを認識できること
・仲間と協調して地球に向けて電波を送り出せること

今回は
・自前で電力を得られること
について考えてみます。

探査機はコンピュータですから電力を得ることが必須です。太陽電池はとても良い電力源になります。
アルファ・ケンタウリ星に近づいて、電力が十分に入ってきた時には地球への無線送信のために最大限活用してくれます。

しかし太陽電池の欠点は近くに恒星が無いと働いてくれないということです。
4.3光年の長い旅路の中で何もないのはつまらないです。最低限の動作は生きていられるような電池を持っていたらいいなと思います。
このメリットはいくつかあります。
・自己診断プログラムが動かせる
・弱いながらも電波を送信できる
・近くの仲間を確認出来る
・姿勢制御が出来る

原子力電池は放射性元素の長期にわたってエネルギーを出し続ける特性を利用したものです。
小さな放射線源と、それによって発電する素子を組み合わせて最低限の電力を得られれば、アルファ・ケンタウリへの長ーい旅路を少しだけ面白く出来るのではないかと思います。



放射性元素を使ったバッテリーにはいくつか種類があります。
・放射性元素の熱を使用するもの
・放射性元素の放射線そのものを使用するもの

熱を利用するのもは古くから活用されています。
ボイジャー探査機、土星探査機カッシーニ、火星探査機キュリオシティー、冥王星探査機ニュー・ホライズンズ
これらは500W程度の大きい電力を生み出します。

小さな探査機に使えそうなものは放射線そのものを利用する電池でしょう。
現在研究されている電池の中でNi-63を使用したものを挙げてみます。
これは巷にあるようなシリコンの太陽電池の表面にNi-63を付着させたものです。
Ni-63の半減期は100年ですのでアルファ・ケンタウリまで持って行っても大丈夫そうです。
実際の発電量は、Niの量にもよりますが1nW程度。
ミリの1000分の一の1000分の一Wです。
うーん、ちょっと大変?
長い旅路ですから、何ヶ月もかけて一回分の充電をして機器を動かせばなんとかなるでしょうか。
シリコンの太陽電池は放射線にも弱く、N-63の半減期にも達しないまま劣化してしまうかもしれません。
InGaN系の太陽電池は結晶的にとても強いですから、それを使用してあげたらまた良い結果が生まれるかもしれません。